出会い系の可能性
私が読んでまず何よりも印象的だったのは、「入門ベスト・パートナーになるために」がこの作家の処女作に相応しく、まさしく彼の主題と方法がもっとも純化した形でここに登場することである。
私はこの本をまず最初に読んだならば、いかに美しく純粋な魂が、作家という形を取ってこの世の中に登場したかということについて、狂喜したことだろうと思った。既にみなさんがご存知のように、J博士の作家としての主題というよりは、人間としての信念としてもっとも大切なことは、男と女がいかに魂の底から理解し合い、和合して愛し合う人生を送るかということにある。
博士はそのことの信念を、いかにも初々しい形でこの本の中に提出している。しかも、その和合のための方法をためらうことなく、読者の前に提示して見せる。
日本人のいちばん大きな欠点は、何事も暗黙のうちにいつかは了解し合えると思っていることである。いまは付き合い始めたばかりだとか、まだ結婚したばかりだとか。
いまはまだお互いに気持ちがわからなくても当然だろう、しかしそのうちに理解し合えるようになる、そう思って小さな不満は胸にしまって、それを言わずに耐えていく。お互いがそれぞれ不満を胸にしまって耐えているのならば、まだいい。
片一方は何ら不満を感じず、これであたりまえだと思い、相手も何も感じていないと考えて、日々を過ごしていく。その一方で、相手のほうは日々の小さな不満がいつの間にか積み重なり、やがて大きく膨れ上がっていく。
やがて、片一方の大きくなった不満は爆発する。そして、まったく一方的に不満を述べたてる。
相手は驚き、戸惑うばかりだ。ここでは、もはや会話は成立しない。
一方の不満を走然と聞くばかりだ。聞くだけならそれでもいいが、人間は感情の動物だから、そういうわけにはいかない。
不満を聞かされたことの不満、すなわち相手に対する悪感情だけが独立して爆発する。すると不満を言い出したほうは、自分は十分な根拠があって不満を冷静に述べているのに、相手はわけもわからず感情的になってしまったと思う。
こうなるとどうしょうもない。二人を結びつげるべき会話のきっかけは、どこにもないのだ。
そこで両方が思うことは、今日は日が悪いのだということだ。二人は、それぞれいい機会をとらえて改めて話し合おうとする。
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